「映画秘宝まつり」に行かなければならない理由(わけ)
町山智浩インタビュー

町山智浩氏  10月31日に開催される「映画秘宝まつり」。これは現在東京・渋谷で開催中の東京国際映画祭の協賛企画「東京国際ファンタスティック映画祭」の一夜を彩るイベントだ。

 「映画秘宝」という雑誌をご存知だろうか。映画オタクが互いの知識と情熱をぶつけ合うという、今、日本で最も読む価値のある雑誌といっても過言ではない。「映画秘宝まつり」とは雑誌の作り手が熱い読者とじかに対峙するという和やかな中にも身を斬られるような緊張感の漂うイベントである。

 このイベントのキュレーターであり、「映画秘宝」を立ち上げた編集者兼ライター、さらに「<映画の見方>がわかる本」などの著書を持つ映画評論家であり、映画<毒舌>漫才コンビ、ファビュラス・バーカー・ボーイズでは相方のガース柳下と共に毒を吐きまくるウェイン町山こと町山智浩氏に「秘宝まつり」に行かなければならない理由(わけ)を聞いた。

 ちなみに町山氏はアメリカ在住、来日直後の10月25日に時間を割いていただいた。

――町山さん、すみませんキュレーターって何するんでしょうか。

 えっと、キュレーターって美術館とかで作品を引っ張ってくる仕事なんですが、それを映画でやるっていう作業です。

 もともと映画祭ってビデオ発売や劇場公開が決まってて、わざわざ見に行かなくても後から観られる作品が多いんですよ。それじゃあ面白くないんで、日本で一回も上映されてなくて、これからも上映する予定のないもの、ファンタスティック映画祭に来ないと絶対観れない作品を上映したいと思ったんです。

 アメリカにはフィルムのライブラリーって結構あるんですよ。フィルムのライブラリーっていうのは全米にある名画座みたいなところにフィルムを卸す仕事で、そこの奴とたまたま知り合いになって「キュレーターやってる 」って言ったら「オレたくさん(映画のフィルム)持ってるんだけどさ〜」って(笑)

――じゃあ個人的なつながりで

 そいつサンフランシスコの工業地帯の廃墟の中にひとつ倉庫を買って映画館にしてるんですよ。そこに35mmのフィルムを大量に持ってて、怪獣映画とか60〜70年代の作品がほとんどなんだけど。

 「これ日本で(上映)できないの?」ってきいたら「できるけど字幕の問題があるだろう」と。フィルムを傷つけられないから字幕は打てないし、リプリントするにはお金がかかる。そしたらファンタスティック映画祭の方で、字幕はビデオでプロジェクトすることができるって言うんで、僕が字幕を翻訳して上映できることになったんですよ。

 その映画は日本で一回も上映されたことがないし、ビデオ会社も買う予定がないものなんで。今回の映画祭に来ないと観られません。

映画祭は“文化事業”なのだ

町山智浩氏――突然ですが、映画祭の意義ってどんなところにあるんでしょうか

 そもそも映画祭って“文化事業”であるべきで、“文化事業”って何かって言うと、知られざる映画を紹介すること。売れる映画以外は観る機会がない現状で「商売にはならないかも知れないけれど上映しましょう」っていうところに意味がある。

 いい映画祭って新作より過去の作品をやるんですよ。なかなか観れなかったものをプリントしなおして出したり、発見してきた作品を上映したり、監督を呼んで上映後に「ここはどういう意味だったんですか」って過去の作品についてティーチインしたりするものなんですよ。でも映画祭が“文化事業”でもなんでもなくて新作のプロモーションとかコマーシャリズムの一環になってきてる。

 あと、映画祭って普通、トロントとかカンヌでも観光客がいっぱい集まる、毎日映画漬けになりたい映画ファンと世界中からバイヤーも来るんですけど。東京だと全然そんなことにならないんですよね。

「秘宝まつり」は関係ない

――では「映画秘宝まつり」は“文化事業”として?

 いや「映画秘宝まつり」は、もう全然関係なくて(笑)。

――えぇっ!?(一同コケる)

 今回、「ジャッキー・ブラウン」(97年)って映画の元になった「フォクシー・ブラウン」(74年)って映画をやるんですけど、(マーチン・)スコセッシとかスパイク・リーとかがお金を出して運営してるニューヨークの名画座で、3年位前そこで初めて見たの。そしたらそこの客がノリノリなんですよ。主人公の女性(パム・グリア)が黒人独特のしゃべり方で、何かいいこと言うと客が「イエー!」って毎回やるし、おっぱい出したりすると皆で「オォー!」って言うし、悪いやつを追っかけて殺そうとすると(コブシを振りながら)「GO AHEAD!」ってやるわけ。

 映画ってこういう見方もあるなって思ったんですよ。やってみるとすっごい楽しいし、それを「秘宝まつり」でやりたかったんです。

 映画を観るときに、日本人って真面目に観るじゃないですか。アメリカで映画観るのって全然違うんですよ。もうギャーギャー騒いで、もの投げるし、「死ね〜」とか言ってるし。

 こないだ「スイムファン」Swimfan(02年)って観たんだけど、女の子が男の子をだましてドロドロに引きずり込むって話なんですけど、女の子が何かたくらんでセリフ言うと客がみんな「だまされちゃいけねえぞ〜!」(笑)。

――「志村後ろ〜」みたいな。

 そうそう。すごい可笑しいんだよ、「この女ビッチだぜ〜!」とか画面に向かって叫んでんの。で、誰かが面白いこと言うと他の奴らが「イエー!」って。

 あとこないだ「クン・パオ」Kung Pow: Enter the Fist(02年 ※ファンタスティック映画祭で28日に上映)っていう映画をニューヨークのほんとに汚い映画館で観たのね。劇場行ったら黒人が4人くらいしかいなくて、観てたらあまりに下らない映画でさ、そしたら黒人の一人が「おい! おい!」って他の客に話しかけんの。「おい、みんな何しにきたんだよ!」って(笑)。

 「いや〜なんかクンフーとかいうとちょっと来ちゃうんだよね〜」とかみんなで話し出して、「お前ら、そんな離れて座ってないで、ちょっとこっち来いよ! そこのアジア人も来い! ポップコーンあるから食え!!」。いっしょに座ったら「お前、ヒマなわけ? することないの?」とか「なんなんだよこの映画は?」とか言ってんの。

――とにかく観ながらみんなで騒ぐ。

 騒ぎ方も教えるし、声を思いっきり出してくれってことですね。一番イヤなのは、サービスでおっぱい出したときに「う〜ん」(腕を組みしかめっ面)っていうのがヤなのね。おっぱい出たら「ウオォー!!」っていうのが正しいって思うわけ。オレはね。

 日本だと映画館で笑うとうるさがられたりするけど、アメリカでは金曜日の夜7時の上映なんてみんな映画館に騒ぎに来てるんだもん。

――その金曜日を秘宝まつりで…

 そうですね。やりたいなって感じですよね。「サイン」(02年)って映画あったじゃない。日本じゃ真面目に宣伝してるけどアメリカの映画館すごかったよ、爆笑の連続で。みんなゲラゲラ笑っててさ。好きな食べ物「ハンバーガー」とか「テリヤキチキン」とか、お前普段ろくな物食ってないだろ!ってギャグで、客死ぬほど笑ってた。お前ら貧乏だな〜って。ああいうのは笑うための映画だからね、日本人は真面目すぎだよね。

「映画秘宝まつり」上映作品紹介

町山智浩氏――では今回上映する作品についてお聞かせください。

 「フォクシー・ブラウン」は74年の公開なんだけど、アメリカではビデオが出て大ヒット。(クエンティン・)タランティーノはこれに捧げる映画として「ジャッキー・ブラウン」を作ってコケたんだけど。「ジャッキー・ブラウン」はわりとシリアスなラブストーリー、でも「フォクシー・ブラウン」はもう完全にイケイケの話で、おっぱいは出るし、車は爆発するし、機関銃クンフーが出てきてっていう、おいしいことは全部やるサービス映画なんで面白いですよ。

 東映が昔作ってた“女アクションもの”っていうのがあって、女が出てきて、歌って踊っておっぱい出して、スケベな男をぜんぶ殺しちゃうっていう。そんな中でも「フォクシー・ブラウン」は「0課の女」(74年)にテイストが近い。これもすごい傑作なんですが。

 重要なのは、黒人のために作られた映画なんだけど白人が結構見てたってこと。タランティーノをはじめ、ティム・バートン、ジョン・カーペンターとか白人監督たち、どうも彼らの最初の性的なうずきだったみたいなんだよね。タランティーノは当時、お母さんが黒人とつきあってて、彼につれてってもらったんだって。小学生でショックをうけたってインタビューで話してた。

 もう一本やる「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲」(01年)っていうのは、ジェイ&サイレント・ボブっていうキャラクターがいて、彼らが出演する「クラークス」(94年)「モールラッツ」(95年)「チェイシング・エイミー」(97年)「ドグマ」(99年)に続く5作目にあたるんだけど、それまでを観てないと楽しくないっていうのは確かにある。

 内容は本っ当ににくっだらない内容なの、テレビのパロディとかゲストが下らないことをやるとか、もうお祭り映画で別に真面目にみて欲しいとか思わない映画なのね。日本だと映画観て笑うとかあんまりなくて難しいんだけど。下らないって怒る人いるけどはじめから下らなく作ってるんだから怒るようなことじゃないんだけど。

 この「ジェイ&サイレント・ボブ」はオチがすごくってそこで感動したんですよ。詳しくは言えないけどあえて言うなら「2ちゃんねらー」必見ということで。

 でもバックグラウンドになる知識っていうかパロディの元ねたがわからないと辛いとこがあるので、今回はFMラジオとイヤフォンを持ってきてくれれば、邪魔にならない程度に「今のは、○○の××ですね」とか説明します。うっとおしかったらイヤフォン外してもらってかまわないし。

 「龍虎兄弟」は「映画秘宝」が推してるOZAWA(小沢仁志)監督ということで編集部のプッシュで入ったんで僕のブッキングじゃないんですが、小沢仁志さんも哀川翔さんもVシネの世界では有名なんだけど、普通の人は劇場で観たことないだろうっていう(笑)。観る価値ありますよ。

 以上の3本の上映と、ギンティっていうのがスタントに挑戦する企画のビデオを上映したり、まあ来るのは読者だけだろうからってことでお見せできるものとか、あと僕の相棒の柳下(毅一郎)ってのとやってる映画漫才でも、誰も聞いてないだろうっていうここだけの話をするんで、楽しみにしていてください。

――以上、インタビュー前編ということで“「映画秘宝まつり」に行かなければならない理由(わけ)”。おわかりになりましたでしょうか? インタビュー後編“「映画秘宝」ができるまで”へ続く

期  日 10月31日(木曜日)22:30開演!(開場22:00)
場  所 渋谷パンテオン
チケット 全席指定3500円均一
チケットぴあ 03-5237-9966(10:00〜23:30)
@チケットぴあ http://t.pia.co.jp/ Pコード 500-999
(ただし、東京ファンタスティック映画祭共通のPコードになりますので、10月31日の日時を指定し、お間違えのないようお買い求めください)
お問い合わせ 東京ファンタ事務局 03-5777-8600
(ハローダイヤル 7:00〜23:00)
http://www.nifty.ne.jp/fanta/tokyo/

(取材:斉藤葉子、菊池真一郎 協力:ジャンクハンター吉田)